プロ野球チームのファンであること問題

 2017年3月11日。震災から6年経った本日、世田谷ものつくり学校で開催された「東京野球ブックフェアトークイベント 野球ライターになるには」を拝聴した後、その足で横浜スタジアムで行われたオープン戦「横浜×ロッテ」を見てきました。「野球ライター」が13時終了で、オープン戦は13時スタートだったので、なかなかの強行軍でしたが、どちらも行ってよかったと思っています。

 「野球ライター」はベイファンの村瀬秀信さん、巨人ファンの中溝康隆さん、高校野球を中心に取材をされている中村計さんが登壇されました。村瀬さんは高校卒業後、家の事情で大学に行けず、エロ本の編プロから出発して、あの名著「4522敗の記憶」を書き上げるまでに至ったそうです。対して中溝さんはサラリーマンをやりながら「プロ野球死亡遊戯」というブログを立ち上げ、アクセスを伸ばしていくうちに編集者から声がかかり、ライターの道に進んだそうです。

 言ってみれば村瀬さんは叩き上げ中の叩き上げ。エロ本の中で書きたいモノ、”野球”を織り交ぜているうちに、そういう方向への道が開けたという半生を送っていらっしゃっていて、雑草魂みたいなものを感じました。対して、中溝さんは、ネット内PV競争から勝ち上がり、脱サラしてライターになった。そのため、取材に慣れていないものの、気に入らないものは断ったり、炎上したとしても計算の範囲内っていう考え方を持っていたりと、ある種、芯の強さみたいなものを内包されている方だなあと感じました。

 

 村瀬さんも中溝さんも私と同じアラフォー世代。それぞれ、ファン歴は30年近いと思われます。このお話を聞いて、「あれっ。ファンってチームカラーと近い性格を持っているのかな?」という仮説が自分の中で立ち上がりました。村瀬さんの雑草魂は三浦大輔投手に通じるものがあります。中溝さんの芯の強さは、読売ジャイアンツの歴史とプライドみたいなものを想起させます。

 新聞記者から野球のノンフィクションライターになった中村さんの話は置いておいて、この仮説が気になりながら、その足でハマスタに向かいました。観戦は試合途中からでしたが、乱打戦だったので、時間的には十分に楽しめました。負けちゃいましたけどね。

 オープン戦とはいえ、観客席はどこも埋まっており、三塁側内野席で見ていました。ロッテの応援はいつ聞いてもカッコいいですね。統制の取れ方がハンパない。ベイスターズ側は春休みというのもあって、子どもファンも多かった。ヤジを飛ばす人がいれば、いいプレイには拍手を送る人がいる。環境問題用語風にいうと”ファン多様性”みたいなものを垣間見ることができました。

 私が子どものころのハマスタとある意味変わっていないのかなあ。あの頃の応援団のおじさんたちは皆パンチパーマ。選手もパンチパーマで応援団もパンチパーマ。インターネットがなかったので、応援団の方が応援歌の歌詞を紙で配っていたのですけど、それをもらいにいくのが恐かったなあという思い出があります。

 横浜は港町なので港湾系、工場系のファンの方も多くて、見た目恐そうだけど本当は優しい、または、ガラの悪いヤジを飛ばしっぱなしっていうファンの方もいらっしゃいました。東京のベッドタウンでもあるので、家族連れのファンも多かった。スーパーカートリオの時代は、私なんか、子どものころに見ていてかっこよかったですからね。ポジティブなファンもネガティブなファンも入り混じっていた。ファン層の幅は広かった印象がありますね。DeNAになってからはネットの世界から入ってこられた若年層のファンも増えましたね。ファンの数も増えましたし、層はさらに広がった。

 チームはずーっと弱かったので、昔、駒田徳広さんも仰ってましたが、「ストレス解消にヤジを飛ばしている」ファンが多かったかもしれません。本日の試合でも、そんな感じのヤジを飛ばしている方が散見されました。今でも同じような見方をしているファンがいる。本日の「追いつけそうで追いつけない乱打戦の負け試合」も昔から変わってないですが。

 各チームを見回してみても、チームのファンってそのチームカラーとか、チーム状況に似ているような気がしますね。弱いときは観客動員数が減るし。それは当たり前か。違う見方をすると、20年、30年とファンをやっていれば、やはりファンチームの状況が人格に影響されちゃいますよねえ。自分を投影して見ちゃってたりもしますしね。

 そう考えると、やっぱり村瀬さんはベイスターズのように弱い中からでも地道に這い上がっていく選手にやっぱり似ている。ベイスターズって高卒ドラフト下位から主力選手になった選手が多いですよね。三浦大輔投手のほかに石井琢朗選手、今でいうと梶谷隆幸選手、桑原将志選手。石川雄洋選手もそうか。

 ベイスターズを弱いと思って、自分も弱いまま応援している人もいる。少しずつ強くなりつつあるベイスターズモーニング娘。の公開オーディションのように(古いか?)選手を見守りながらファンになっていく若年層のファンもいる。これが”ファン多様性”です。私が勝手に名付けてるだけですけどね。今のベイスターズの有り様がファンにも現れているっていうことですよ。

 個人的な話ですが、私は今、身の回りのことでボッコボコにヘコんでおります。細かいことを言い出すと、もう野球の話ではなくなってしまうので言いませんけど。自分が弱いままでいると、自分のファンであるチームを卑下して見てしまったりするようになってしまう。今日もそういう風に見てしまいそうになってしまった。まあ、なんというか、ファンもチームを信じる強さが必要なんじゃないかと思ったりして。それもチームに影響を及ぼすんじゃないかと思ったりして。

 で、311の話をここで急に持ち出してみると、あのときにネット上で出てきた声って、人間性がすごい出てたというか、皆いい人だったなあと思ったり、人間って切羽詰まると、覆っていた仮面みたいなものがベリッとぎ取られますよね。私が東日本大震災でわかったことってそういうことでした。

 三浦投手の引退試合のとき、私はネットで見てましたが、画面上から観客席の三浦投手への思いがあふれ出てたなあと感じました。打たれても打たれても静かに祈るように見守る。一人、また一人と「頑張れ」の声が広がっていく。ベンチとファンが一体になった感じがしましたね。

 あの試合って、ベイスターズファンにとっては東日本大震災とは言いませんけど、大事件中の大事件だったと思うのです。ファンのファンらしい姿が見えたのもあの試合でした。

 自分もそうですけど、いつなんどきでもファンは選手を信じられるファンでいるべきだなあと。信じられなくなったときは周りの人も信じられない人間になってしまうのではないかなあと思ったりしてね。ああ、なんかごめんなさい。話が逸れっぱなしでしたね。話がぐちゃぐちゃ。誰だよ、40代が不惑って言った奴は!もう!