「いつの空にも星が出ていた」を読んで

 オフシーズンは「ストーブリーグ」なんて呼ばれておりまして、”やきう”ファンにとってストーブが必要になる季節は、契約更改や移籍の動きなどの話題で盛り上がることを指しているようです。

 我がベイスターズも、三浦監督就任や井納投手、梶谷選手のFA宣言、ロペス選手、パットン選手の退団など、短い期間のうちに大きなニュースがわっと流れ込んできましたね。明るいニュースは今のところ少ないようですが。

 とりあえず、ストーブリーグの話題は置いときまして、ちょっと、こんな本を読んだのでご紹介したいと思います。

  ベイスターズファンはもう既に読み終えた方もいらっしゃるかもしれません。佐藤多佳子さん著の小説「いつの空にも星が出ていた」。平たく言うとホエールズベイスターズファンに焦点を当てた短編集です。

 あくまでフィクションなのですが、多分、ハマスタに行けば隣の席に座っていそうな人たちが登場人物です。川崎球場時代からのファンから、遠藤一彦に惹かれたファン、98年日本一に狂喜乱舞したファンから暗黒時代も応援し続けたファン。そして現在の小学生ファンと数多の各世代ファンたちが、いずれの物語にも登場します。

 選手に心惹かれてファンになった人がいれば、彼氏に連れられて、親御さんに連れられて、いつの間にかファンになった人もいる。ベイスターズというチームから心が離れてしまいつつも、やっぱり自分はファンだったと確信して戻ってくる人もいる。みんな、いつのまにか、なんで、このチームのファンになったのか、忘れてしまっている。なんなんでしょうね。ファンって。

 この本には「ファンとはなにか」といった答えは載っておりません。ないんです。そんなものは。そこに好きなチームがあるからファンなんです。「ファン実存主義」なのであります。

「ファン実存主義」なんて言葉は私が今、思いついた適当な造語であって、この本にはそんなものは一切出てきません。ただし、「ファン実存主義」はこの小説の登場人物が実証している。エビデンスだ。

 私が今、何を言っているのかわからないくらいに、私はこの本に心を動かされました。なんで動かされたのかよくわからないんです。本当に。なんなんでしょうね。ファンって。

 とりあえず、この本は「4522敗の記憶」以来のベイスターズファンのバイブルになりそうな気がします。

いつの空にも星が出ていた

いつの空にも星が出ていた